「土星のリングは,内側と外側と2つにわかれているようにみえます。間に黒いすき間がある。そのすき間は発見者の名をとって『カッシーニの間隙』と呼ばれます」。「かんかく?」「いえ,かんげき,です」。
quote:NASA(米国航空宇宙局)は,無人土星探査機カッシーニによるこれまででもっとも鮮明な土星写真を公開した。土星から約7000万kmの距離からの高分解能カメラでの撮影(NASAのページ,拡大写真)。
「さて,あの土星のリング,どれくらいの厚さだと思いますか?」「えっと…,あのリングって氷がごろごろと転がっているんですよね?」「そうですね」「と云っても,土星って地球の10倍ぐらいの大きさでしょ? あんなにはっきりくっきりしているってことはそれなりに厚くないとおかしい。数kmか数10kmか…それくらいの厚さがあってもおかしくない。…あっ,でもちょうどリングが地球からみて水平になったときに,薄くてほとんどみえないことがあったって聞いたような…」「そうですね。いまだ厚さはきちんとわからず,諸説あります。ですが,とても薄いと云う人たちの意見では,約10mほどではないかと云われます」「10m…」「そう云われてもう一度土星の写真をみると,不思議ですね。あなたの身長の6倍ぐらいの厚さしかないなんて。だから真横からみたらほとんどみえない。でも,わたしたちは土星をみると,きちんとリングがみえる。今回の探査機,カッシーニによって,リングの詳細もわかるでしょう。神は,みえる謎を残していた。その謎が解き明かされるのかもしれません」。
「わたしはね,思うんですよ」「はい?」「わたしはずっと,子どものときから夜空を見上げ続けている。でも,わかることはホントにわずかしかない」「はぁ,そうですね」「土星のリングの厚さなんてことも,たくさんのわからないことの,ほんのひとつでしかない。でも,それを求めて一生を終えてしまう人も,天文学者のなかにはいる」「なんか,寂しいですね」「そうです。でも,神が与えてくれた謎に,大きい小さいはない。そう考えると,その学者の一生は幸せに満ちている」「星空に,意味を持てるか,ということですか?」「そもそも人間にとってわずかな光の星に,たいした意味はないんですよ。だから,人間ではなく,もっと違う,なにか,その思いで夜空を見上げるんです。そうすると,夜空に星があること,そのもとで人として生きること,そして死ぬこと,それらがいとおしくなる。……あ〜,ちょっと無駄口がすぎましたね,すみません」「……いえ,なんか,わかる気がします」。
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